藤原歌劇団公演 「ランスへの旅」

10月22日 (日)
あまり演ぜられることのない、ロッシーニの傑作 「ランスへの旅」(藤原歌劇団公演)を観に(聴きに)東京文化会館に行きました。
主役の一人である折江忠道さんご夫妻とNM先輩ご夫妻とがご昵懇であることから、これまでも折江さんの出演される 「コンサート」や 「オペラ」にご一緒させていただいています。
美しい折江夫人はじめ、NMご夫妻のお仲間の皆さんにお目にかかり、親しくお話できるのも楽しみの一つです。
 
「ランスへの旅」 は初めて観るオペラなので、CDかDVDを手に入れようと、あちこち探したのですが、何故か大手のレコード店やInternetでも手に入りません。
そこで、ぶっつけ本番で出かけましたが、これが意外にも(ロッシーニ先生には大変失礼ですが)予想をはるかに越えた素晴らしいものでした。
 
プログラムによると、このオペラの台本には Dramma Giocoso (楽しい、愉快な劇というような意味?)と書いてあるそうです。
しかし、シャルル10世の戴冠祝典のために書かれたオペラのためか、コミカルな内容にもかかわらず、きわめて上質の美しい音楽に溢れており、悪ふざけのようなものは見当たりません。
 
主要な出演者は36名(ダブルキャストですが)。ベルカントで難しいロッシーニ節?を歌い上げる歌手を、これだけ揃えるのは大変ではないかと思いました。
マエストロ ゼッダは、プログラムに「この困難極まりないオペラを演奏できるキャストを集めるには、世界中からより抜きのロッシーニ歌手を呼んで来るるか、或いは一緒に延々と練習をする意欲のある若手を集めるかのどちらかしかない。」 「若手は上手いか下手かのどちらかであって、可もなく不可もないということは決してない。」と書いています。
今回は、マエストロが期待したように、日本を代表する藤原歌劇団の若手の皆さんが、夜を徹して練習と研鑽を重ねられたに違いありません。其の成果が見事に結実して、素晴らしいステージが出来上がったと思います。
 
本来の物語は、フランス東部の保養地 プロビエールの 「金の百合Giglio d’Oro」 という温泉宿に、ヨーロッパ各地から保養に来ている紳士淑女達が、シャルル10世の戴冠式の行われる 「ランス」 に出かけようとすることを巡っての大騒動です。
 
ところが今回の演出では、ロッシーニの生まれ故郷であるアドリア海に面した保養地 Pesaro の海浜の白いテラスの上で、すべての話が繰り広げられることになっていました。
この斬新な演出と舞台は、2004年のマドリッド王立劇場のプロダクションをそのまま持ってきたものだということです。
保養地でのお話なので貴顕淑女 (侯爵夫人も伯爵夫人も、伯爵も男爵も) 全員が白いワードローブ姿で登場しました。
これには、ちょっとビックリしました。これからどんな風に話が展開するのか、興味津々といったところでした。
 
休憩を挟んだ後半も、舞台転換もないまま(背景に夕闇とともに月が懸かる程度)物語は進んで行きます。
テラス上で全員が「ランス」へ出かけるため、衣装を取り替える(男性は下着をちらつかせて..)のには、客席の笑いを誘っていました。
舞台装置も衣装も非常に簡素でしたので、経済的な舞台にみえましたが.....。
 
舞台の奥を使わないので、出演者は舞台上のテラスの上を、蟹(?)のように横に行ったり来たりするのも面白かったです。
最後に、高橋 薫子さんがオケピットのハープの横に下りて、シャルル10世を称える即興曲を歌うのが、唯一の例外的な縦の動きと言えるでしょうか?
 
簡潔な舞台とは裏腹に、音楽は本当に素晴らしかったです。
それぞれの出演者が歌いこんだ聴かせどころを、たっぷりと見事に決めていました。(佐藤美枝子さんと高橋薫子さんには大拍手。パチパチパチパチ..)。
二重唱、四重唱もバランスが良く取れて、綺麗に纏まっているように思いました。
合唱団が出ないのも珍しかったですが、出演者が大勢なので合唱団に代わって,みんなで歌ったのではないかと思っています。
ソリストばかりの合唱というのも、めったに聴かせていただけないだけに、面白かったと言ったら申し訳ないかもしれません。でも、見事なアンサンブルはさすがでした。
 
ということで、この週末は 「イドメネオ」と 「ランスへの旅」 の二つのオペラ(どちらも初めて観ました)に出会い、それぞれに感動し、満足しました。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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